血液型性格診断の虚偽
数年前だったでしょうか?
〇〇型の取扱説明書とかいう本が流行しましたね。
このブログの読者様にも,少なからずその本を手に取った方がいるのではないかと思います。いえ,その本でなくても年に数冊は血液型に関連する性格の本が出ているのではないでしょうか。
残念ながら,世間にはその本を信じて「A型の人って融通聞かないんだよねwww」と血液型でその人を判断してしまう人がいるのです。
では,本当に血液型は性格に影響を与えるのでしょうか?
結論から言うと,心理学の常識では「血液型が性格に影響を与えるとは言えない」と考えられています。
たとえば,松井(1991)は以下のような研究を行っています。
対象者:全国から無作為抽出(ランダムに選択すること)した約3000人
調査方法:血液型と性格特性(e.g. 誰とでも気軽に付き合う)に当てはまるか否かで回答。
結果:血液型によって性格特性は認められない。たとえば,A型と他の血液型の性格特性の回答を見たときに,A型だけ高いもしくは低いという回答がなかった(有意差が認められなかった)。
また,項目によっては有意差を認められても,その後の調査(松井は4回調査している)では差が認められなかったり,差が認められても1回目はA型で認められたのに2回目ではO型で差が出るなどばらつきが大きかった。
これらの結果から,「血液型は性格に影響を与えるとはいえない」と結論付けることができます。
ただ,この後面白い研究が出ていて詫摩・松井(1985)は,次のような研究を行っています。
目的
①血液型によって性格が異なるか検討する。
②血液型と性格の関係を信じてる人数の調査。
③この関係を信じてる人とそうでない人との性格特性の違いについて検討する。
方法
調査法。調査内容は,
①血液型
②能見(1984)の研究で血液型によって違いが出やすいとされている性格特性について「はい・?・いいえ」のいずれかで答えるもの(3件法)
③血液型で性格が異なると信じる度合いを「非常に異なる・かなり異なる・あまり異ならない・全く異ならない」の4件法で尋ねたもの
④性格特性に関する質問
結果
血液型による性格の違いはほとんど観察されなかった。
血液型と性格の関係を信じる人の特徴として……
①他者と親密になろうとする傾向が強い(親和欲求)
②権威への追従欲求が強い
③感情の起伏が激しい
という特徴が観察されました。
このように,心理学的には「血液型と性格に関係があるとは言えない」と考えられているの。
そもそも,〇〇だから××といった因果関係を問うことは慎重にならなければいけないことなのです。
次回は,その事も踏まえながら心理学の研究方法について解説しようと思います。
ここまで読んで下さり,ありがとうございます。
【参考文献】
松井豊 1991 血液型による性格の相違に関する統計的検討 立川短大紀要,24,51-54